CDを聞いて、一度、生演奏を聴いてみたいと思っていた。
今日、その夢が叶った。
ピアニストの名は、河村尚子。ドイツを拠点に国際的な活動を広げている。
演目は、「主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ」BWV.639から始まる。
言わずと知れたJ.S.バッハの作品であるが、河村がピアノに触れると、会場内が一瞬にして、厳かな雰囲気となる。
続いて、演目は、ショパンの「3つのマズルカ」やピアノソナタ第2番へと続く。
特に、第2番に含まれる葬送行進曲は、しめやかな、そして重厚な悲しい響きが会場を埋め尽くす。
河村も、葬送行進曲を弾いているときは、激しさをおさえるかのように動きを止めながら、見事に第2番までを弾き切った。
後半は、オールリストプログラムだ。
リストと言えば、超絶技巧を用いなければ弾けない作曲家として有名だ。ピアニストの腕が試される。
そのなかで印象に残ったのは、シューマン(リスト編)の「献呈」は格調高く、言わずと知れた名曲、「愛の夢 第3番」では、一音一音紡がれるピアノの音色が愛おしく聞こえた。
最後は、リストの『「巡礼の年 第2年 イタリア」より ダンテを読んで』である。リストは、イタリアでダンテの叙事詩「神曲」などの文学作品に触れ、刺激されたという。この難局に挑んだ河村は、リストが高揚し、新しい文化に触れ感激している気持ちを見事、弾き切った。
現在、日本人によるクラシック界での活躍が目覚ましい。ベルリンフィルのコンサートマスターに選任された樫本大進をはじめ、ソプラノ界では幸田浩子や森麻季、指揮者ではベルリンフィルを振る佐渡裕、さらには、チャイコフスキー国際コンクールで優勝した諏訪内晶子や川久保賜紀、上原彩子、神尾真由子など、数えればきりがない。
彼らが活躍できるのは、日本人として初めてといっても過言でない、世界で活躍する場を切り開いた小澤征爾の存在を忘れてはならない。
アンコールでは、ショパンのノクターン20番などでこたえてくれた。会場内の止まぬ拍手にこたえてくれたのか、アンコールは、計4曲を数えた。
暗譜で全ての曲を弾いた河村尚子。どうして、このような才能に恵まれたのか。
将棋界の米長邦雄名人は言う。
その道を極めるためには、
「好きであること」「続けること」。そして、「高きを求めること」と。
本物の芸術に触れると、心がリフレッシュされ、感動以上の何かを得る。
それは、その芸術家の上辺だけでない、努力を積み重ねてきた魂にまで、触れることができるからであろう。
また、一人、これからの活躍を益々応援したくなったアーティストに出会えた。
河村尚子様
本日は、大変感動しました。
これから、益々のご活躍をご祈念申し上げます。
PS.一部、私的な、クラシカル音楽に対する独断的な解釈等が含まれていることを、ご了承ください。